トロンボーン・ピース・オブ・ザ・イヤー2022作曲賞 
(POY2022)本選結果

 

優勝およびポピュラリティー賞

相澤 圭吾 / メカは歌う
Eight Mechanisms Singing a Song (2021)

 洗足学園音楽大学トロンボーンアンサンブル:
 津吹 亮汰、櫻井 美湖、岩井 心、神野 葵
 篠塚 裕太、小野 航、神田 拓海、永野 宏弥



入選

天野 由唯 / 二藍の記憶 -トロンボーンとピアノのための-
Two indigo Memories - for Trombone and Piano- (2021)
 トロンボーン:三浦 葉月、ピアノ:高良 仁美


入選

杉本 能 / 無伴奏バストロンボーンのための Extinction…!?
Extinction…!? for Bass Trombone Solo (2020-2021)
 バストロンボーン:星野 和音


審査員 (五十音順)
糀場 富美子 (作曲家、東京音楽大学教授)
福士 則夫 (作曲家、東京音楽大学客員教授)
吉川 武典 NHK交響楽団トロンボーン奏者、東邦音楽大学特任准教授)

天野 由唯 Yui Amano

現在東京藝術大学音楽学部作曲科3年次に在学中。
これまでに作曲及び作曲理論を長谷川京子、平井正志、藤原嘉文、澤内崇、安良岡章夫、林達也の各氏に、ピアノを石川朝子、福尾文子、荒木美佳、植野真知子、秋場敬浩、原田英代、若桑茉佑の各氏に師事。
ヤマハハイライトコンサートin Osaka2016はじめ、ジュニアオリジナルコンサート(JOC)の選抜コンサートに自作曲で多数出演。
兵庫県小学校児童作曲コンクール特選、阪神地区中学生作曲コンクール銀賞。
室内楽作品からオーケストラ作品までの初演経験多数。
ヤマハピアノ演奏グレード2級、指導グレード3級取得。
 

曲目解説

二藍の記憶-トロンボーンとピアノのための-
二藍(ふたあい)とは、アイとベニバナの二種の染料の重ね染めで得られる色で、高価な紫根染めに頼らない紫として平安時代より男女を問わず愛好された。
若向きの物ほど濃い赤紫に近く、年をとるにつれて薄い青色に近い色を身につけていたことが分かる。
 
紅花の花言葉
「情熱」
開花が進むにつれて花色が黄色から紅くなることから。
 
藍の花言葉
「あなた次第」
アイの葉によって白い布が淡い色から濃い色まで自在に染められることから。
 
2つの花言葉はそれぞれ2つの楽想として曲中に現れる。トロンボーンとピアノの混ざり合い、2つの楽想の混ざり合いを経て、「二藍」という歴史の深い色彩を見ることができたらと思い作曲した。
 
 

杉本 能 Mune Sugimoto

静岡県島田市出身。常葉大学短期大学部音楽科卒業。同大学専攻科音楽専攻在学中。
77TIAA全日本クラシック音楽コンサート出演、奨励賞。第1回全日本学生国際ソロコンクール優秀賞。第31TIAA全日本作曲家コンクール審査員賞。
作曲を塚本一実、田村修平、伊藤康英、森広樹の各氏に師事。NPO法人浜松生涯学習音楽協議会、日本音楽即興学会、各会員。
 

曲目解説

無伴奏バストロンボーンのための Extinction…!?
以下に引用する文章は、2020年春に断片を作成の後、2021年春に完成された拙作《増殖 I 》の作品解説の抜粋である(※本作は、この楽曲の続編である)。
『「何が増殖するのか?」その問いに明確な回答を用意しているわけではないが、それが物理的なものか、精神的なものか、はさておき、ここ数年の社会情勢に影響されていることは、確かだと思う。希望が増殖すれば、絶望も増殖する。そして、絶望が増殖すれば、希望も増殖する。それが「何か」は、わからないが。』
さて、時は流れ、2021年も残りすでにわずかとなったが、2020年に発生したあの脅威は、未だ我々を悩ませている。
このまま我々はどこにいくのだろう
 
 
 

相澤 圭吾Keigo Aizawa

神奈川県大和市出身。神奈川県立大和西高等学校を経て昭和音楽大学音楽学部音楽芸術表現学科作曲・音楽デザインコース4年次在籍。第1011回音楽大学オーケストラ・フェスティバルのファンファーレを作曲。第30TIAA全日本作曲家コンクール室内学部門奨励賞を受賞。作曲の会「Shining」会員。これまでに作曲を後藤洋、秋田和久の各氏に師事。

 

曲目解説

《メカは歌う》は、私が2021年から書きはじめた「(数+)名詞+『は歌う』」シリーズの二作目に当たります。共通項としては、
・調性の保有や安定したリズムなどの、比較的単純な書法を基盤とすること。
・異なる音楽の突然の介入やテンポの不一致などの、「合わせない」要素を盛り込むこと。
などがあり、そのうえで如何に⾳楽を歌うかを課題としています。
そして、この曲独自に試みた点として、特殊な演奏者の配置による立体的な音響効果を用いた対比表現があり、より「合わせない」コンセプトを明確にするよう指向しました。